聞こえてますか?この音色

 


届いてますか?この想い

 

 

伝わってますか?僕の気持ち

 

 

 

 

「シャニー?シャニどこぉー?」

 

「何だクロト。シャニの奴また消えたのか?」

 

「うん。何処にもいないんだ」

 


小さな小さな孤児院。

 

戦争で親が居ない子供。

 

家庭の事情で親元から離れなければならない子供。

 

満7歳ほどの少年少女たちが、ひっそりと暮らしている小さな孤児院。

 


オルガ、シャニ、クロト。


この三人の少年達も、そんな子供達の一人。

 

三人はいつも一緒で。

 

三人はとても仲良しで。

 

三人は、本当の兄弟のようで。

建設者のシスターが目を細め、思わず笑んでしまう程の仲の良さ。

 

泣く時も、怒る時も、笑う時も。

 

みんな一緒で。

 

天使をそのまま、人間の子供にしたみたいと語るほど。

 

 

三人は、仲良し。

 

 

そんな三人の中で、シャニはいつも何処かへとふらふらと出歩く問題児。

 

いや、問題児と思っているのはオルガとクロトだけ。

 

子供なのだから周囲に興味を抱くのは当たり前。

 

むしろその事を、自我が発達してきているんだと喜ぶべきなのだが。

 

二人はまだまだ幼子。

 

そんな風に頭を働かせるのではなく、ただ一言

 

 

シャニを、独占したい。

 

 

その気持ちが何より勝って、いつもシャニを追いかけていた。

 

シャニが自分達と別の人間と一緒に笑ったり。

 

泣いたり。

 

一緒にいれば、ムカついて。

 

邪魔に入り、奪い取る。

 

自分達の宝を、姫を守るかのような気分で。

 

シャニをその場から連れ出しまた三人で仲良く遊ぶ。

 

そんな、毎日。

今日だって、そんな毎日の内の一欠けら。

 

 

そんな毎日の、ちょっとしたイベント。

 

 

 

 

シャニが見当たらない。

 

 

 

 

自室も、庭園も、談話室も、シスターの部屋にも。

 

どこにも見当たらないのだ。

「後は何処探して……」

 

「残ってる場所って一体……」

 

 

いつも一緒。

 

いつも一緒にいないと落ち着かない。

 

居て当たり前だから。

 

居なくちゃ、世界が成り立たない。

 

まるで落としてしまった自分の分身を探すかのように、必死で探していたら。

 

「………この音…………?」

 

「………礼拝堂、か…………?」

 

懐かしい旋律。

 

シャニがいつも弾いてくれた。

 

シャニがいつも奏でてくれた。

 

シャニがいつも、語っていた。

 

せがめば、軽く苦笑しながらだが、しかし楽しげに弾いてくれた曲。

「絶対シャニだよ!」

 

「行くぞ、クロト!!」

 

 

優しい 暖かな旋律

心の奥の 遥か彼方を揺さぶるような

暖かくて 優しい旋律


シャニの 曲

 

 

 


「「―――――…シャニッ!!!」」

何の前触れもなく、解き放たれた扉。

 

ソレまでは締め切られ薄暗かった室内。

 

大して広くない、その聖域は。

 

扉から差し込む一筋の光によって、ほんのりと明るく白に染まっていた。

 

差し込む光の中心 に

 

………シャ〜ニっ!」

 

 

探し求めていた 分身が

 

「ったく、何処にいるかと思ったぜ」

 

 

小さく羽を畳んで

 

…………ぉ、るが……くろと…………?」

 

 

座り込んで いた

 

 

 


ちょこんと、自分より大き目の台座に座りながら二人を見上げるシャニ。

 

シャニと共にいる、ピアノ。

 

神に捧げる曲を奏でるだけあり、造りは豪華に出来ている。

 

小さな身体には不都合な筈なのだが、自然と。

 

自然と、シャニはその闇に溶け込んでいた。

 

ピアノと、シャニの病的な白さとのコントラストが、シャニの儚さを一層、引き立てているのだろうか

 

 

「シャニ、何していたの?」

 

「…ぇ、っとね……」

 

 

消えてしまいそうな、シャニを見ていると…。

 

急に、不安になって。

 

クロトはきゅっと、小さなシャニの肩を抱きながら尋ねた。

 

 

 

若草色の髪が頬に当たる度に実感する。

自分は、シャニのことが好きなのだと。

 

 

クロトがシャニに抱きついているのに触発され、オルガもまたシャニを優しく抱き締める。

 

クロトからは反対の位置。

 

二人でシャニを挟み込むかのように、きゅっ、と。

 

 

 

若草色の髪が頬に当たる度に実感する。

自分は、シャニのことが好きなのだと。

 

 

二人に挟まれて、少々息苦しそうにしながらも。

 

シャニは、柔らかく微笑みながら

 

 

 

 

 

ポーン…

 

 

 

指を鍵盤に乗せ、軽くノイズを奏でた。

 

答えは、コレ。

 

でも、気付かない二人。

 

そんな二人の為に、もう一回。

 

 

 

 

ポーン…

 

 

 

 

 

 

さっきと同じ、木が弦を打ち据える度に奏でるノイズ。

 

楽しげに微笑みながら。

 

なおもシャニは、奏で続ける。

 

指を使って、ちょこんと、鍵盤を。

 

電気のスイッチを入れるかのような、そんな軽い仕草で何回も。

 

何回も。

 

 

「……プレゼント、してたの」

 

 

 

コレはプレゼント

 

顔を見たことも無い あなたのへの

 

 

 

「……今日はあなたにとって大事な日ですよって、シスター言ってたから」

 

 

 

コレは宣戦布告

 

顔を見たこと無い あなたに向けての

 

 

 

「……今日って―――――…」

 

「…母の日、か?」

 

「………うん、そぉ〜」

 

 

 

 

 

 

おかぁさん

 

 

 

 

あなたに捧げます

 

 

 

 

 

聞こえますか?

 

 

 

 

 

僕の

 

 

 

 

 

 

心の音が

 

 

 

 

 

END

 

 

いつもありがとうございます!
珠洲 彰さまから頂きましたvv
孤児院設定大好きな私なので、大いに満足させて頂いちゃったり・・・・vv
シャニがピアノを弾くのは良いですよね。とても似合いますし、音楽という関連性もあり。
三人がともに行動をしている・・ただそれだけで良いです・・・・・。
2004/6/5
戻る

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送